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三好愛さんの絵は、不思議な奥行きがあります。
描かれる対象も、柔らかな輪郭を持ち、それが自分の焦点がずれてしまっているような奇妙な感じを受けます。でもそこには「なんとなく」という言葉がしっくりくる手触りを感じます。あたたかさ、やわらかさ、奇妙さ、さみしさ、不思議なその見えない心持ちを描いて、そこに納めているという印象を受けます。
「特に自分の形をさだめずに、ぐにゃぐにゃと、まわりがつくる空気に合わせて形を絶妙に変えて生きていけたら、それはそれで、ぬるま湯みたいでいいよなあ、と思います。」
柔らかなお湯や、温かな布団のように、安心な場所は誰しも持ち得ていて、その曖昧で安心あ場所にずっととどまることができないからこそ、いつまでもそれを求めてしまう。
この一文には、私たちが持つ柔らかな欲望が顔を出しています。
絵と同じように、不確かさの魅力を感じる短い文章が、33編収録されています。三好さんの絵が好きな方、ちょっと不思議な話が好きな方にも、オススメしたい1冊です。
size:12.8x17cm
185ページ
2020年6月30日 初版
三好愛:イラストレーター
ことばから着想を得る不思議な世界観のイラストが人気を集め、『どもる体』伊藤亜紗(医学書院)、『某』川上弘美(幻冬舎)をはじめ数多くの本の装画や挿絵を担当するほか、クリープハイプのグッズデザインも手がけるなど、幅広く活動。
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